生きっぺし

「こわいよう~。お母さん。お父さん。助けて!」
声が聞こえた。

瓦礫の中に佇むと、多くの声なき声が聞こえる。
苦しかったろう。
辛かったろう。
嘆きの声が聞こえてくる。

高台に上がり辺りを見渡すと、瓦礫の山の上に船があった。
異様な光景に息が詰まる。
あそこに母の実家があったはず。
その先が広場でお祭りをしていた所。

小学生の頃、従兄弟姉妹で花火をした夏祭りの夜。
実家のお兄さんが、いつも面倒見てくれた。
楽しかった。
夏休みの楽しい思い出の所。
お兄さんは親分肌で、地域ではリーダーだった。
気性の荒い船乗りだったが、情が厚く頼もしい存在であった。
その兄が津波に飲まれてしまった。

虚しい。
虚しさに包まれてしまう。

盛岡に帰り街並みを見ると、あれは現実だったのかと思ってしまう。

震災から四十九日が過ぎ五十日目の朝。

「生きっぺし」
「精一杯生きて、後の人たちに語って聞かせるべし」
「生きることは大変だけども、今回の事を、これからの事を、後の人たちに語って聞かせるべし」
「私たちの分も生きて語って、後の人たちに語って聞かせて」

励ましの声だった。

泣いていられない。

泣いていても何も始まらない。

せっかく助かった命だもの生きよう。
そして、良いことも悪いことも、みんな経験して語って聞かせるべし。

みんな!
生きっぺし!

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